ブセファランドラ・パールグレイの商標登録 Part3: B.拒絶理由通知書
以下が「拒絶理由通知書」全文です。赤文字は僕の超ざっくり解説です。素人なので解釈に誤認があるかもしれません。正確性は保証しません。
まず審査官は何の予備知識も無い状態で、いきなり「Bucephalandra Pearlgray」という紙切れ1枚の出願を見て審査するところから始まり、その段階でこの商標が登録できるかどうか判断します。
拒絶理由通知書でこの商標が登録できないと判断された理由。ざっくり書くとこんな感じです。
1.パールグレイ色をしたブセファランドラという品質(色)を表しただけで識別力が無いからダメ。
2.既にパールグレイは一般的に流通しているから、あなたがその名称を登録するのはダメ。
3.あなたに独占させると他の植物に「Bucephalandra Pearlgray」と名付けるかもしれず、消費者が誤認する可能性があるからダメ。
4.そもそも区分第31類に指定商品「組織培養植物」は無いし、その範囲も明確でないからダメ。
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拒絶理由通知書
適用条文 第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号、第6条第1項及び第2項
この商標登録出願については、商標登録をすることができない次の理由がありますので、商標法第15条の2(又は同法第15条の3第1項)に基づきその理由を通知します。
これについて意見があれば、この書面発送の日から40日以内に意見書を提出してください。
なお、意見書の提出があったときは、商標登録の可否について再度審査することになります。
理 由 1
■第3条第1項第3号(品質等表示)及び第4条第1項第16号(品質等誤認)
この商標登録出願に係る商標(以下「本願商標」といいます。)は、「Bucephalandra Pearlgray」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「Bucephalandra」の文字は、〈別掲1〉(下部参照)のとおり、水草の一種を表す語であり、「Pearlgray」の文字は、「真珠色」の意味(「Weblio英和辞書」(https://ejje.weblio.jp))を有する語です。
※Bucephalandraは水草の学名であること、Pearlgrayは真珠色を表す普通の単語であり単に商品の品質を表すものだと言っています。
品質を表しているのは良いことのように思いますが、識別力がないため商標として認められません。例えば「赤いトマト」は品質を表しているだけなので登録できません。
そして、〈別掲2〉(下部参照)のとおり、本願の指定商品を取り扱う業界においては、ブセファランドラの一品種としてパールグレイのブセファランドラが一般に取引されている実情があります。そうしますと、本願商標を、その指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、ブセファランドラの一品種としての「パールグレイのブセファランドラ」であること、すなわち、商品の品質を普通に用いられる方法で表示したものと認識するにとどまるというべきです。
※つまり色を表しただけの一品種が一般に流通しているので、あなたの商品に識別力はないですね、だから商標登録することは出来ないよと言ってます。
審査官の「パールグレイのブセファランドラ」という語順に違和感を感じますね。「そういう色のブセファランドラってことでしょ」と思っている感がひしひしと伝わります。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品について使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがありますから、同法第4条第1項第16号に該当します。
※ここで??となりますね。最初は意味が分かりませんでした。実際ここで躓く方が多いそうです。
この意味するところは、あなたは「ブセファランドラ・パールグレイ」という商標を他の植物に付けるかもしれないよね、という事のようです。そんなわけあるか!と言いたいところですが、これは出願の際の「指定商品」の範囲に問題がありました。審査官は与える権利は最小限にしたいと思っています。
〈別掲1〉ここで審査官はブセファランドラは水草の名称だよ、という例を示しています。この内容は特許庁のHPで一般に公開されていますが、審査官が挙げているショップ様はこの件と無関係ですので伏字とさせていただきます。
1 「AQUASHOP 〇〇〇〇(アクアショップ 〇〇〇〇)」のウェブサイト
「◆今さら聞けない?ブセファランドラの【あいうえお】とは。名前の特徴やインドネシア便や、小型・中型・大型種の違い。」の見出しの下、「ブセファランドラ(Bucephalandra)は、比較的近年にブレイクした水草のグループです。ボルネオ島(インドネシア)に分布しておりバリエーションは豊富でコレクションして楽しむアクアリストも。そして、アヌビアスのように石や流木に根を活着させる特性を持ち、レイアウトにも人気が出ました。枯れづらいのですが、基本的には生長が遅いタイプが多く、珍しい品種はそれなりの価格がしています。」との記載がある。
https://sakana-〇〇〇〇.com/2019/09/17/https-wp-me-p8ix9b-39u/(2022年9月5日最終閲覧)(上記文章の一部はこちらのページから抜粋されています。)
2 「〇〇〇.com」のウェブサイト
「ブセファランドラとは」の見出しの下、「ブセファランドラとはボルネオ島原産の水草で、クリプトコリネ等と同じサトイモ科に属しますが、クリプトコリネの様に水質変化等で溶けることがほとんどなく丈夫です。人気が出始めたのはここ最近で、水槽内で花を咲かす珍しいタイプの水草でもあります。ブセファランドラには種類が多いのも特徴で、中には少し値の張るものもあり、アクアリウム初めての方は手を出しにくいという印象もあるようですが、育成自体はとても簡単で、今ではアクアリウム初心者の方にもおすすめの水草の仲間入りをすることとなりました。」との記載がある。
〈別掲2〉ここで審査官は「Pearlgray」は一般的に流通してる、だからあなたは登録できないよという3例を示しています。審査官殿、ナイス検索能力です、ありがとうございます。
1 「Aqua Studio 〇〇〇〇」のウェブサイト
「TB ブセ・パールグレイ入荷しました。」の見出しの下、「今回はマレーシア・サラワク州から久々入荷の美麗植物です。「ブセファランドラ・パールグレイ」どの個体も素晴らしい植物が届きました。」、「●Bucephalandra sp. "Pearlgray" 4000円 SOLD」及び「葉の色が明るめの個体と、暗めの個体がございます。」との記載がある。
https://〇〇〇〇-web.ocnk.net/news-detail/384(2022年9月5日最終閲覧)(上記文章の一部はこちらのページより抜粋されています)
審査官殿、それは当方の卸先です。
2「東南亜泥炭会 TEAM BORNEO」のウェブサイト
「☆ブセファランドラ パール&ダーク 2種リリース」の見出しの下、「No.1 Bucephalandra sp. "Pearl gray" ¥4,200(完売)」について、「変わることのない輝き!いつでもパールグレイはわくわくしますね。」との記載がある。
https://teamborneo.at.webry.info/201605/article_2.html(2022年9月5日最終3/閲覧)
審査官殿、それは当方のサイトです。
3 「“Roots” Stock Store」のウェブサイト
「ブセファランドラ sp. 'パールグレイ' (TB便) 」の見出しの下、「何年も前に入荷した株を元に増殖したものです。ディープパープルよりは強いですが、やはり少し水質に敏感になる時があります。親株に使った株はパールが少なめの個体だったと思いますが、栽培下では普通に全体に乗りました。調子を崩したところから戻してきた株のためあまり綺麗ではないので元株用としていかがでしょうか。」との記載がある。
https://roots.ocnk.net/product/1080(2022年9月5日最終閲覧)
審査官殿、それは当方の卸先です。
理 由 2
■第6条第1項(指定商品又は指定役務の表示が不明確)及び第6条第2項(区分相違)
指定商品及び指定役務は、商標とともに権利範囲を定めるものですから、その内容及び範囲は明確でなければならないところ、この商標登録出願に係る指定商品中、第31類「組織培養植物」は、その内容及び範囲を明確に指定したものとは認められません。
そのため、この商標登録出願は、政令で定める商品及び役務の区分に従って商品を指定したものと認めることもできません。
したがって、この商標登録出願は、商標法第6条第1項及び第2項の要件を具備しません。
ただし、前記指定商品を、要旨を変更しない範囲内において商標法施行規則別表又は類似商品・役務審査基準に掲載されている商品に補正したときはこの限りではありません。
※この出願段階では「組織培養植物」という指定商品が第31類に存在しませんでした。ですのでそのような指定商品は無い、さらに出願の際、草、苗など植物全般を指定商品にしてしまっていたので範囲が広過ぎる、明確でないと判断され、正しい指定商品に補正または削除してくださいと言われているのだと思います。この理由2は非常に難解ですし、今でも正確に理解できません。
また、前記指定商品を商標法施行規則別表又は類似商品・役務審査基準に掲載されている商品に補正することができないときは、その商品の生産、製造若しくは使用の方法、原材料、構造、効能、用途等の説明を意見書をもって明らかにするとともに、その指定商品の表示を商標法施行規則別表、類似商品・役務審査基準又は独立行政法人工業所有権情報・研修館ホームページ(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/t1201)の特許情報プラットホームで提供されている「商品・役務名検索」等の掲載例を参考にして明確な表示に補正したときもこの限りではありません。
ただし、この拒絶の理由2が解消しても、拒絶の理由1はいまだ解消しませんので、御注意ください。
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ちなみに拒絶理由通知書が来ることは最初から想定内です。ご丁寧に特許庁から「諦めないで!」とのエールまで書かれています。
はい、諦めません。意見書でメチャクチャ反論しまくりますよ~!
というわけで次は「手続補正書」「意見書」です。